こども家庭庁 若者支援に関するオンラインシンポジウムに参加しました

2025年9月24日(水)、こども家庭庁が主導する「若者支援に関するオンラインシンポジウム」に参加しました。
本シンポジウムのテーマは、「歌舞伎町に集まる若者たち」――いわゆる「トー横キッズ」の実態と、それに対する具体的な支援の取り組みが紹介されるという、非常に社会的関心の高いものでした。


シンポジウムへの参加体験

オンラインでの開催にもかかわらず、多くの支援者や教育関係者、行政職員、医療・福祉の専門家たちの熱量が伝わってきました。発言者のひとつひとつの言葉に、現場での苦悩や試行錯誤、そして若者たちに向ける真剣なまなざしが込められていたのが印象的でした。

中でも、ある登壇者が「トー横の問題は、トー横だけでは解決しない」と口にしたとき、画面越しにも多くの人が頷いているように感じました。メディアで取り上げられる過激なエピソードの裏にある「なぜそこに来ざるを得ないのか」という構造的な問題。その解像度をあげていく必要性が、シンポジウム全体を通して強調されていました。


「トー横」の実態と社会問題化の背景

「トー横」とは、東京・新宿の「TOHOシネマズ新宿」前の横断歩道付近、通称「トー横」と呼ばれる一帯を指します。そこに自然と集まる若者たちは、SNSや動画投稿アプリなどで「楽しそうな場所」「逃げ場がある場所」として共有されており、全国から若者が集まってくる状況が続いています。

しかしその内実は、家庭に居場所がない、学校や職場に適応できない、精神的に不安定である、経済的に困窮している――そうした事情を抱えた若者が大半であることが、現場支援者の言葉から浮かび上がってきました。

特に印象的だったのは、支援現場での聞き取りの中で「多くの若者が『ここにいるのが一番安心できる』と話す」という報告です。たとえ路上であっても、同じような境遇の人が集まり、互いに「わかってくれる」と感じられる場所。それは、社会の中に確かな「安心の居場所」が存在しないことの裏返しでもあります。


「きみまも@歌舞伎町」の概要と運営状況

東京都では、こうした現状を踏まえて「きみまも@歌舞伎町」という若者支援拠点を2023年に開設しました。正式には「若者を見守る居場所支援拠点」として、歌舞伎町の中心部に位置し、トー横エリアからも徒歩数分のアクセスにあります。

この施設は、外観こそ目立たないものの、内部は開放感のあるフリースペースに加え、個室相談室、救護スペースなどを備えており、年齢やニーズに応じて柔軟に対応できる構造になっています。ソファや軽食、ゲームや書籍などが備えられ、若者たちが「何も求められずに過ごせる」時間と空間を提供しています。

施設には臨床心理士、ソーシャルワーカー、看護師など多職種のスタッフが配置され、日々10~40名程度の来所があるとのこと。利用者の滞在時間は30分程度の人もいれば、半日以上滞在する人もおり、「ただ黙って過ごしたい」「話を聞いてほしい」「ちょっと休みたい」というニーズに、それぞれ対応できる体制が整っています。


外部機関との連携と対応事例

「きみまも@歌舞伎町」は単なる居場所の提供にとどまらず、必要に応じて外部機関との連携を図り、医療機関、児童相談所、警察、弁護士、NPO団体などとネットワークを構築しています。

例えば、以下のような対応事例が紹介されていました:

  • 救急搬送が必要なODケースに対し、看護師が迅速に状態を評価し、119番通報と保護者への連絡を同時に実施。

  • 18歳未満の若年者が深夜に保護された場合、児相への通報と一時保護への橋渡しを実施。

  • SNSで知り合った大人との金銭的トラブルに関しては、都の弁護士会と連携し、無料相談の機会を提供。

  • 「家に帰りたくない」と話す少女に対し、一時避難できるシェルターを紹介し、後日家庭支援センターとの三者面談を実施。

これらは単発的な対応ではなく、記録と振り返りを重ねながら、同様のケースに備えるためのナレッジとして蓄積されているとのことです。


感想と社会的意義の再確認

今回のシンポジウムを通じて、「トー横」の問題を“センセーショナルな事件”としてではなく、“社会構造の鏡”として捉える視点の重要性を再認識しました。

「きみまも@歌舞伎町」が提供しているのは、「何かを変える場所」ではなく、「とどまっていてもいい場所」です。そこには、「この世界に少しだけ安心していられる感覚」をもたらす空間と関わりがあります。

支援とは、何かを解決する手段であると同時に、「存在していい」と伝える営みでもある。そのことを、私は今回のシンポジウムで深く学びました。
若者支援に携わる立場として、今後もこの「声なき声」をどうすくい上げていくか、その問いを胸に現場に向かっていきたいと思います。


 

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