生活保護はどのように申請すればいいか?

生活保護はどのように申請すればいいか?

生活保護を受けるためには必ず申請が必要になります。これを申請保護の原則といいます。

生活保護法
(申請保護の原則)
第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。

ではどのように申請すればよいのでしょうか?
このページでは申請主義について詳しく説明していきます。

どこに申請に行けばよいかについてはこちらをご覧ください


 

 

窓口に申請書は置いてない?

生活保護の申請は福祉事務所で行います。どのような方法で申請すればよいでしょうか?

役所の手続きは手順が定められていることが多いです。

例えば住民票が欲しい場合、戸籍課窓口に行って、交付申請書を記載して、手数料300円を支払って交付してもらう。コンビニで取得する、郵送で取得する、代理人が取得する方法もありますが、その場合も細かく手順が定められています。

生活保護の場合はどうでしょうか?福祉事務所に行けば、生活保護の申請書がおいてあるのでしょうか?
これまで様々な福祉事務所に生活保護申請の同行に行っていますが、窓口に申請書があった例は一つもありませんでした。

役所のホームページを見ても、生活保護の申請書がダウンロードできるようになっているページは、数えるほどしかありませんでした。
ほとんどのホームページにはこう書いてあります。
「まずは福祉事務所にご相談ください」

これはたとえ窓口に行っても同じ対応で、このように言われます。
「まずは話をうかがいましょう」


 

 

まずは面接で自分の話をしなければいけない

生活保護を受けるための要件は複雑です。住民票の交付のように本人確認書類と手数料だけで簡単に申請ができるものではありません。
あなたが生活保護を受ける要件に当てはまっているか確認するために、面接で詳しく話を聞く必要があるのです。
この面接は福祉事務所の「相談係」の職員が担当します。

生活保護を受けるための要件は生活保護法に定められています。ここでは詳細は省きますが、大きく分けると以下の3つの要件に分類できます。

  • 資産について(預貯金、不動産、車、株式などを持っているか。持っているとしたら何をどれくらい持っているか。それらを処分して生活することはできないか)
  • 能力について(年齢や健康状態に応じて、仕事を探して収入を得ることはできないかなど)
  • 他法・他施策について(生活保護以外の制度を利用できないか。例えば扶養義務者から仕送りをもらうことはできないか、年金、雇用保険、手当、保険金などをもらうことはできないかなど)

上記の要件に照らし合わせて、相談係のケースワーカーから詳しく話を聞かれます。嘘を言っていないかどうか証拠資料も確認されます。例えば預貯金の額については通帳の金額がどうなっているか確認されます。
申請の際にこれらの資料を必ず持参する必要はありませんが、こうした資料をひととおり持っていくと、話が早いかもしれません。


必要な書類を明示してくれている福祉事務所もあります。
例えば中野区のホームページには保護申請にあたり持参してもらいたい資料として、以下のものが挙げられています。

  • アパートの賃貸借契約書(最新のもの)・借地契約書
  • 家賃等の支払い確認書類(領収書・振込明細・家賃帳)
  • 預貯金の通帳(世帯の全員分、当日に記帳したもの)
  • 生命保険・簡易保険・とみん共済等の証書
  • 不動産の登記簿謄本・固定資産税評価額のわかる書類
  • 給与明細書(最近3か月分)
  • 年金手帳・年金の証書・振込通知
  • 手当(児童、障害者福祉、難病等)の種類や金額がわかる書類
  • 各種健康保険証・自立支援医療受給者証・マル障受給者証等
  • 身体障害者手帳、精神保健福祉手帳、愛の手帳等
  • 介護保険証 介護サービス利用票
  • 光熱水費(電気・ガス・水道)、電話料金の直近の領収書
  • (外国籍の方のみ)在留カード、パスポート
  • 印鑑(スタンプ印は不可です)

これらの書類がないと保護申請ができないわけではありません。ただし、口頭でのみ報告した場合は後日必ず書類や資料を確認されます。申請時にある程度の確認がされ、申請が受理された後に詳細な調査(ミーンズ調査)が実施されます。例えば預貯金に関しては、あなたの取引がある全ての金融機関に照会がかけられます。

これらの確認、調査で嘘をつくことはできません。嘘をついて、後日それが発覚してしまった場合、返還金が発生したり、不正受給とみなされたりするので、いいことはありません。ありのままの現状を伝えましょう。


 

 

面接は密室で行われる

生活保護を受けるためには、要件を満たしているか確認するための詳細な面接を行うことは分かりました。この面接は福祉事務所の「相談係」の相談員が実施します。

この面接はあなたの経済状況、健康状態、家族関係など、とてもプライベートなことを詳しく聞いていくので、密室で行われます。福祉事務所には、相談に来た方とケースワーカーが話すための個室がいくつか用意されています。面接はその個室で行われます。

プライバシーに関わる情報を話すので、面接は個室でなければ困ります。しかし密室であるからこそ生じる問題もあります。そもそも相談に乗る相談員にもさまざまなタイプがいます。人間なので、優しい人も、厳しい人も、年配の人も若い人も、女性も男性もいます。

もし、密室でとても怖そうな相談員から、「あなたはまだ若いから働けるでしょう。こんなところに来ないでハローワークで仕事を探しなさい!」と言われたらどうでしょう?

気が弱い人なら生活保護をあきらめてしまうかもしれません。


 

 

相談員は怖いって本当?

誤解のないように言っておくと、相談員は決して怖い人ばかりではありません。中には親身になって話を聞いてくれる方もいらっしゃいます。ただし、残念ながら全員がそうではありません。一般の役所への相談のイメージを持っていると、全く違う対応をされて衝撃を受けるかもしれません。

とても厳しい対応をする男性をあえて相談員に配置していたり、受付の人員に警察のOBを配置していたりする福祉事務所も実際にあります。

これは、暴力団による生活保護の不正受給が問題化したことが原因だと言われています。暴力団のしのぎの一つとして、生活保護の不正受給が挙げられています。暴力団に入ると、手始めに生活保護を受けてくるように言われる、という話も聞きます。

暴力団による不正受給をきっかけにして、当時の厚生省が生活保護申請を抑制する方向に方針転換しました。これは厚生省による「123号通知」と呼ばれています。これにより相談員は強面の男性職員が担当し、申請の要件は面接で厳しく判断するようになったと言われています。

そしてこの申請抑制の流れは暴力団以外にも波及し、一般の申請者にも厳しい対応がされるようになりました。これを「水際作戦」と言います。
生活保護制度は一度受理されてしまえば、申請後に不支給が決定されることは少ないと言われています。申請前の段階、すなわち相談の段階で申請をあきらめさせてしまおうという水際の抑制策が取られているのです。


 

 

現在も行われている水際作戦

123号通知が出されたのは昭和56年です。水際作戦なんて昔の話なんじゃないの?と思う方もいるかもしれません。

しかし現在でも水際作戦は行われています。

近年で水際作戦が大きく報道されたのは、横浜市神奈川区での事件です。この事件では2021年2月22日に神奈川区の福祉事務所で生活保護の申請に訪れた20代の女性に対して、面接担当の相談員が悪質な水際作戦をおこなったとされています。

住まいを失って相談に来たこの女性はアパートに入って生活をしたいと訴えましたが、対応した職員は「ここの場合、家のない状態だと、施設にご案内する形になっている」、「申請したとしても、所持金額(約9万円)が基準を超えているので却下になる可能性がある」などと、生活保護制度に関する虚偽の説明を繰り返したとされています。

さらにこの女性は自作の生活保護申請書を持参しましたが、相談員は「申請の紙は、お申込みの時にお渡しするので、前もってお渡しするということはしていない」と断言し、申請書を受け取ろうとはしなかったようです。

この女性はTwitterで支援団体関係者に相談しました。窓口でのやりとりをスマホで録音していたこともあり、最終的には神奈川区福祉事務所の担当部長、及び横浜市が本人に対して謝罪をするに至っています。

この事件は2021年2月に報道されました。水際作戦はわが国でいまだに行われているというのが現実です。
他にも、ある都内福祉事務所では「保護申請には親族全員の連判状が必要だ」などという全く根拠のない発言をされて追い返されたという話も聞きます。

このような水際作戦がいまだにまかり通る理由は以下の2つです。

  1. 保護申請は相談員との密室でのやり取りとなること
  2. 生活保護制度は複雑で分かりにくいため、嘘の説明をされても申請者が気付けないこと

1についてはご本人のプライバシーを守るために必要な措置でもあります。2についても複雑な制度を相談員が理解した上で、必要な人を保護に結び付けるというのが本来の趣旨のはずです。

これらが水際作戦として悪用されてしまっている側面があります。では、悪質な水際作戦に対応するにはどうすればよいのでしょうか?


 

 

水際作戦にはどのように対処すればよいのか?

水際作戦に対処するために最も有効な方法は、生活保護申請時に専門家に同席してもらうことです。

密室で対応されることが問題なので、第三者が同席することで、相談員は無茶な対応ができなくなります。本人以外の第3者が同席することは、相談員にとってはプレッシャーとなります。たとえ一言も話さなくても、一緒に居るだけで効果はあると言えます。

同席だけでも有効ですが、生活保護制度に詳しい専門家が同席できるならより良いでしょう。

「面接に同席はできないことになっている」など虚偽の説明をされる可能性がありますが、申請者本人が同意していれば同席は可能なので、だまされないようにしてください。
福祉のお部屋なら、生活保護申請時に専門家が同席することが可能です。詳しくはお問合せフォームからご相談ください。

さらに、神奈川区の事件のように面談の様子をスマホなどで録音しておくことも有効です。悪質な対応の証拠として取っておくことが可能です。のちに弁護士やNPO支援団体などに相談する際にも役立ちます。

自作の保護申請書をあらかじめ持参することも有効だと思います。場合によっては郵送で申請することも可能です。ただし郵送で申請した場合、後日相談員と面接することになります。

保護申請書は要式行為ではないため、自作の申請書であっても必要なことが記載してあれば有効に申請することができます。


 

 

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