こんにちは。お酒との関係が気になる皆さんに向けて、今日は最新の情報をお届けします。厚生労働省から「令和7年度 アルコール関連問題啓発週間」のポスターが発表されましたので、その内容と啓発週間の意義についてまとめます。
ポスター公開の概要
対象期間:11月10日~11月16日
発表元:厚生労働省ほか関係府省庁(内閣府・法務省・国税庁・文部科学省・警察庁・国土交通省・こども家庭庁)連名で制作されました。
配布予定:ポスターは10月上旬から中旬をめどに紙媒体で配布されます。配布先は、小学校・中学校・高等学校・大学などの学校、警察署、交通機関、地方自治体の公共施設など。オンライン表示用のPDFも公開中です。
このポスターの目的は、「アルコール関連問題への理解と関心を高める」こと。また、飲酒の健康への影響だけでなく、依存の問題、家庭・地域への影響、相談支援の導線を作ることも含まれています。
アルコール関連問題啓発週間とは?
「アルコール関連問題啓発週間」は、法律に基づいた国民運動の一環です。アルコール健康障害対策基本法により設けられており、毎年この時期に、「飲酒によって引き起こされる様々な問題」を社会全体で考えることが目的です。健康問題だけでなく、家庭・仕事・交通・社会福祉の観点からも含めて啓発する週間です。
具体的には以下のようなテーマが含まれます。
飲酒量が多くなると起こる健康へのリスク(肝臓病、心疾患、がんなど)
アルコール依存症の問題と治療・支援のあり方
飲酒運転・事故防止
社会的・家庭的な影響(DVや家庭崩壊なども含む)
飲酒の文化・習慣を見直すこと
この週間をきっかけに、多くの自治体や団体が講座、相談会、ポスター掲示などの企画を行っています。
令和7年度ポスターの特徴と注目ポイント
今年のポスターには、いくつか注目すべき特色があります。
多省庁連携
関係府省庁が連名になっており、アルコール問題を複数の視点(保健・教育・交通・家庭など)から総合的に捉えようという意図がうかがえます。配布先の幅広さ
学校、警察署、公共交通機関など、住民の生活の中で「目にする機会が多い場所」にポスターが掲示されることが予定されており、情報に触れるチャンスが増えそうです。紙とデジタルのハイブリッド対応
紙媒体の配布と同時に、PDFでのダウンロードも可能。オンライン・オフライン双方でアクセスしやすい体制が整っています。教育現場を意識した広報
小・中・高・大学といった学校への配布が確実に行われる予定で、若年層への啓発を重視しているのが印象的です。
今年のテーマは「家族」
「アルコールの問題で苦しいのは飲む人。と、家族と、子どもと、友達と。」
この一文は、アルコール依存症が“本人だけの問題ではない”という現実を、端的に、そして深く表しています。
アルコール依存症とは、単なる「お酒の飲み過ぎ」ではありません。精神疾患の一つであり、適量での制御ができず、日常生活や人間関係、仕事、そして健康にまで重大な悪影響を及ぼす慢性の病です。しかし、もっとも見落とされがちなのは、「周囲の人々」が受ける影響の深さです。
たとえば、家庭内ではどうでしょうか。配偶者やパートナーがアルコール依存症になると、家族は経済的・感情的に大きなストレスを抱えることになります。飲酒に伴う暴言・暴力・失職・浪費・育児放棄などが積み重なると、家庭は崩壊の危機にさらされます。実際、DVや児童虐待の背景にアルコールの問題が潜んでいるケースは少なくありません。
特に子どもたちは深刻です。親が依存症である家庭で育った子どもは、情緒の安定を得られず、自尊感情が低下しやすいと言われています。また、家庭内でアルコールの問題があることを「恥ずかしい」「誰にも言えない」と感じ、長く孤立することもあります。こうした子どもたちは「AC(アダルトチルドレン)」と呼ばれ、成長後も対人関係や感情のコントロールに困難を抱えることがあります。
また、友人や同僚にとっても、依存症は「厄介な問題」ではなく、「自分にはどうにもできない痛み」として感じられることがあります。信頼していた仲間が嘘をついたり、約束を破ったりするたびに、何とも言えない悲しみや無力感が残るのです。
このように、アルコールの問題は本人だけの問題ではなく、「共に生きるすべての人」を巻き込む、社会的な問題でもあります。
だからこそ、今年のポスターテーマ「家族」は非常に重要な意味を持ちます。家族は、依存症の回復にとって“最大の支援者”にも“最大の被害者”にもなり得る存在です。本人の治療だけでなく、家族への支援や教育、グループ支援(例:家族教室や自助グループ)なども欠かせません。
ポスターに込められたこのキャッチフレーズは、私たちに問いかけます。
「あなたの周りに、困っている“誰か”はいませんか?」
啓発週間の意義と期待できる効果
この啓発週間は、ただ「ポスターを貼るだけ」の取り組みではありません。以下のような成果が期待できます。
早期発見・相談の促進:自分や身近な人の飲酒の問題に「気づき」、相談窓口を探すきっかけになること
偏見の軽減:アルコール依存症への誤解や偏見を見直し、「支援を受けるものだ」という理解を広げること
制度・社会の改善:啓発活動が盛り上がることで、保健・福祉の体制整備が進む可能性が高まる
飲酒習慣の見直し:節度ある飲酒、あるいは飲まない選択肢も尊重される社会づくり
注意点と、より効果的な運用のために
一方で、ただポスターを掲示するだけで終わらせないために押さえておきたいポイントもあります。
啓発内容が身近で共感できるものかどうか:「自分のこと」として受け止めてもらえる表現が大切です。
情報が届かない人にどう届けるか:高齢者、ネット環境があまりない地域などにはチラシ配布や地域の集いでの案内など手段を工夫したい。
啓発後のフォローアップ:相談窓口の混雑対策・支援資源の確保なども併せて行う必要がある。
私たちにできること
この啓発週間を最大限活かすために、皆さんにもできることがあります:
SNSや町内のお知らせ板などでポスターや告知をシェアする
家族や友人と「飲酒の習慣」について話してみる
地域の保健所や精神保健福祉センターが開催する相談会に参加する
学校・職場で啓発の取り組みを提案してみる
令和7年度の「アルコール関連問題啓発週間」は、11月10日から16日。多くの人が、この機会をきっかけに「お酒との関係」を見つめ直すことができるよう願っています。ポスターをただ目にするだけでなく、それぞれの生活にも小さな変化をもたらすような週間にしたいですね。