生活保護制度には基本原理、基本原則があります。原理・原則共にそれぞれ4つあります。どのようなものか見ていきましょう。
4つの原理
1. 国家責任の原理
憲法25条の生存権の理念のもとに、生活に困窮している国民は、国が責任を持って保護を行うという原理です。
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
2. 無差別平等の原理
生活保護法の要件を満たす限り、生活困窮に至った理由や社会的身分などに関わらず、日本国民であれば誰でも無差別平等に保護を受けられる原理です。保護を受けられるかどうかは、現時点での経済状態をもとに判断されます。
(無差別平等)
第二条 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。
3. 最低生活の原理
健康で文化的な最低限度の生活を維持できるレベルの保護を保障するという原理です。
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
4. 保護の補足性の原理
各自の資産や能力、他法や他施策(扶養義務者への援助や年金受給など)といったあらゆるものを活用し、それでも最低生活が維持できない場合に初めて生活保護制度を活用できるという原理です。
保護の補足性の原理は、実際の保護申請の際にポイントになると思います。
貯金がある場合、保護を受ける前にまずは貯金を使って生活するよう言われます。自宅や土地、株式など資産がある場合は売却してお金に変えるよう言われます。
働ける場合は、仕事をしてお給料をもらい生活するよう言われます。年金をもらっている場合、何らかの不労所得がある場合、まずはそちらを使うよう言われます。
親族で援助してくれる人はいないか、まずはそちらを頼ることはできないか確認されます。
これらあらゆる方法を使ってもなお保護を受ける必要がある場合に初めて保護が実施されます。
- 貯金はいくら以下ならいいのか?
- 仕事を探す努力はどのくらいしなければいけないのか?
- 車や持ち家は売らないといけないのか?
- 生命保険は解約しないといけないか?
様々な疑問が湧いてくると思います。
細かい基準については今後ブログなどで詳しく解説していきたいと思います。
(保護の補足性)
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
4つの原則
1. 申請保護の原則
保護を受けるためには必ず申請が必要だという原則です。申請は本人、扶養義務者、親族等が行います。
(例外)
差し迫った事情がある場合は、申請を待たずに職権で保護が開始される場合があります。
実際に生活保護制度を利用するにあたっては、この申請保護の原則はとても大切だと思います。生活保護はただ待っているだけでは、基本受けることはできません。自分から申請をする必要があるのです。
ではどこに、どのような方法で申請をすればよいのか?
このような疑問が浮かびます。
具体的な申請方法については別ページで詳しく解説しています。
(申請保護の原則)
第七条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
2. 基準及び程度の原則
生活保護の基準は最低限度の生活水準を満たし、かつそれを越えない範囲とする原則です。保護の基準は厚生労働大臣が5年ごとに定めます。
(基準及び程度の原則)
第八条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
3. 必要即応の原則
生活保護は年齢や性別、健康状態など実際の必要の違いを考慮して、有効かつ適切に行われるという原則です。
(基準及び程度の原則)
第八条
2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。
4. 世帯単位の原則
生活保護は世帯単位で必要性かどうかが判断されるという原則です。
(例外)
これによりがたい特別な事情がある時は、個人単位での支給が行われる場合があります。
例えば、生活保護世帯の子どもが大学に進学する場合などが考えられます。生活保護を受けながら大学に進学することは原則認められていませんが、大学進学する当人だけを世帯から分離することによって進学が可能になります。この場合、その当人は同居していたとしても、一人だけ保護の対象から外れていることになります。
世帯単位の原則も、実際に保護を受ける際にポイントになると思います。保護を受けるにあたっては、誰と住んでいるかを確認する必要があります。
自分が困窮していても、同居者に基準以上の収入があると保護は受けられません。逆に扶養義務者が高収入であったとしても、一緒に住んでいなければ、当人が困窮していれば保護を受けられる可能性はあります。
世帯がない場合、つまりホームレス状態の場合はどうなるのでしょうか?この場合、住所不定で単身扱いとなり、保護の対象となりますから安心してください。