居住支援法人とは何か?その役割と必要とされる背景【第1回】

家を借りたいと思っても「年齢」「収入」「家族構成」などが理由で、なかなか物件を見つけられない人がいます。そうした人々にとって、頼りになるのが「居住支援法人(きょじゅうしえんほうじん)」です。

今回は3回にわたって、居住支援法人の仕組みや役割、宅建業との違い、そして実際に法人指定を受ける方法などについて詳しく紹介していきます。第1回では、そもそも居住支援法人とは何なのか、なぜ必要とされているのか、その背景を整理します。


 

居住支援法人とは?

「居住支援法人」は、住宅の確保が難しい人(住宅確保要配慮者)に対して、住まい探しや入居手続き、生活支援などを行う団体です。国が進める「住宅セーフティネット制度」の一環として、都道府県や市区町村から正式に指定を受けて活動しています。

指定を受けるのは、NPO法人、社会福祉法人、一般社団法人など、非営利または準営利の法人が中心です。


 

誰を支援するのか?~住宅確保要配慮者とは~

住宅確保要配慮者とは、一般的な住宅市場で物件を借りることが困難な人々のことを指します。具体的には以下のような方々が対象です:

  • 高齢者

  • 障がい者

  • ひとり親家庭

  • 生活保護受給者

  • 低所得者

  • 外国籍の方

  • DV被害者 など

これらの方々は、収入が不安定だったり、家主側から「トラブルになりそう」と思われたりして、入居を断られることが少なくありません。支援がないまま放置されると、最悪の場合、路上生活や施設転々という状況にもなりかねません。


 

なぜ今、居住支援が求められているのか?

日本はかつて「住宅難の時代」がありましたが、現在はむしろ空き家の増加が問題になるほどです。しかし、「物件はあるのに、入れない人がいる」という現実が根強く残っています。

背景には次のような要因があります:

  • 「孤独死のリスクがある」と高齢者の入居を断る大家

  • 保証人がいない人を断る管理会社

  • 精神疾患や障がいがあるとリスク回避でNGとするケース

  • 生活保護を受けていると「家賃が滞るのでは」と誤解されることも

このような偏見や不安が、住宅確保要配慮者の「居住権」を阻む大きな壁になっているのです。


 

居住支援法人が担う4つの主な役割

こうした壁を越えるために、居住支援法人は次のような支援活動を行っています。

① 物件探しの支援
入居を受け入れてくれる不動産業者と連携し、希望条件に合う住宅情報を提供します。単なる物件紹介ではなく、受け入れてくれそうな大家の意向まで考慮したマッチングを行います。

② 入居手続きの支援
必要に応じて保証人探しを手伝ったり、契約の流れを説明したり、相談に寄り添うなど、書類まわりの不安を和らげます。法的な契約仲介は宅建業が担いますが、橋渡し的な存在として重要な役割を果たしています。

③ 生活支援・見守り
入居後も、地域の福祉サービスにつなげたり、定期的に安否確認をしたりと、住まいを軸にした包括的な支援を行います。住み始めてからが支援のスタートであるとも言えるでしょう。

④ 家主への支援と信頼構築
入居後のトラブル対応や、行政との連絡を通じて、家主側の不安を軽減する役割もあります。「この団体が支えてくれるなら貸してもいい」と言ってもらえることも少なくありません。


 

第1回まとめ

居住支援法人は、単に「住まいをあっせんする団体」ではありません。住宅確保に困っている人たちの「暮らしを支えるパートナー」であり、家主や地域と連携して、安心して住み続けられる環境を整える役割を担っています。

次回は、宅建業との違いや、居住支援法人にできること・できないことについて詳しく見ていきます。法的な制限や現場での工夫についてもわかりやすく解説していきますので、ぜひご覧ください。


 

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