生活保護の現状

生活保護を受けている人は何人?

2021年では、2,049,630人の方が生活保護を受けています。世帯ベースでみると、保護を受けている世帯は1,638,184世帯あります。
データ、グラフは厚生労働省 生活保護の被保護者調査(令和3年1月分概数)より抜粋

200万人を超える保護の受給者に支払われている保護費の支給総額はいくらなのでしょうか?
2017年の生活保護費の支給総額は約3.7兆円でした。
みなさんはこれを多いと思いますか?

2010年代以降、生活保護受給者数は200万人を超えて推移しており、受給者数の増加が指摘されることが多いです。しかし単純な受給者の人数だけで生活保護が増えているということはできません。人口に対してどのくらいの人が生活保護を受けているのか、すなわち保護率を比較する必要があります。

2021年の保護率は1.63%でした。人口100人につき1.63人が保護を受けている計算です。
データは厚生労働省 生活保護の被保護者調査(令和3年1月分概数)より抜粋

この1.63%の保護率は過去と比較して多いのでしょうか?
現行の生活保護制度の下で保護率が最も高かったのは1951年で2.4%でした。この時に比べると2021年は保護率がかなり減っていることが分かると思います。
近年の不景気やコロナ禍などの中、保護受給者数の増加が報道されると心配になってしまいますが、保護率が著しく増えているわけではないのです。


 

 

諸外国に比べて生活保護の利用者数は多いのか?

2021年の保護率は1.63%でした。これは諸外国と比較して多いと言えるのでしょうか?日本の保護率は、先進国、特に欧州と比べた場合にかなり低いです。

本来保護を受ける必要のある人が、実際にどの程度の割合で保護を受けているか。これを「捕捉率」と呼びます。この捕捉率を欧州諸外国と比較すると、著しく低いことが分かります。日本の生活保護制度は利用者数が多いどころか、必要な人に十分届けられていないのが現状です。


 

 

年間3.7兆円の生活保護費が日本の財政を悪化させている?

このように考える方もいるかもしれません。3.7兆円という金額はとてつもなく大きな金額です。これが毎年保護費として支払われている。なんだか気が遠くなりますね。

しかし、3.7兆円という支給総額は、国家予算内訳の中では多いのでしょうか?

2022年度予算の国の一般会計歳出は、当初予算としては過去最大の107.6兆円でした。さらに補正後予算は110.3兆円にまでふくれあがっています。(財務省ホームページより)

このうち最も大きなウェイトを占めるのは社会保障費で36.3兆円(32.9%)です。社会保障は年金、医療、介護、子ども・子育て等のための支出です。

社会保障費と比較すると生活保護費は約10分の1の支出で、決して多くはないことが分かります。

次に大きなウェイトを占めるのが国債費で24.3兆円(22.1%)です。これは過去の借金の返済と利息の支払いのための支出です。

よく、日本の財政健全化のために生活保護費を削減する必要があるとの主張が聞かれますが、この数値をみるとそれが明らかに間違いであることが分かります。
たとえ、生活保護費をゼロにしたとしても、利息の返済にも全く足りていません。一方で生活保護というセーフティネットを縮小することへの社会不安はとても大きいです。

日本の財政健全化には、生活保護費減額などでは焼け石に水で、もっと構造的な改革が必要なのです。そのような改革が上手くいっていないから、見えやすい矛先として生活保護が狙われているのです。


 

 

不正受給が問題になっている?

財政健全化の問題と同じくよく聞くのが不正受給の問題です。芸能人の家族が生活保護を受給していたなど、不正受給に関連したニュースが度々報道されます。芸能人の家族が生活保護を受給するのが不正受給に当たるのかはさておき、不正受給は本当に問題になるほど増えているのでしょうか?

不正受給の件数、額を表にすると下記のようになります。
日本弁護士連合会「今、ニッポンの生活保護制度はどうなっているの?」をもとに作成)

 
年 度2007年2008年2009年2010年
生活保護利用世帯数154万3321人159万2629人176万3572人195万2063人
生活保護費総額2兆6175億円2兆7006億円3兆0072億円3兆3296億円
不正受給件数15,979件18,623件19,726件25,355件
不正受給件数の割合1.44%1.62%1.54%1.80%
不正受給額91億8299万106億1798万円102億1470万円128億7425万円
不正受給額の割合0.35%0.39%
0.34%
0.38%

不正受給の件数は全体の2%以下です。不正受給の額は全体の支給額の0.4%以下となっており、件数、金額ともに全体に占める割合は決して多くないことが分かります。

もちろん悪質な不正受給には厳しく対処する必要がありますが、不正受給の被害が甚大と誤解し、必要以上に厳しく取り締まることで、本来保護が必要な人が受けられないことの方が問題です。



最近の動向はどうなのでしょうか?

厚生労働省によれば、2016年度の生活保護費の不正受給の件数は4万4466件となり、過去最多を更新しました。不正受給の合計額は約167億円でした。不正受給の件数は増えていますが、不正受給の額は全体の支給額の0.45%で、大幅に増えているわけではありません。不正受給防止のための調査を強化し、不正受給とみなされるケースが増えたことで件数が増加し、一方で早期に発見されることにより金額ベースではそこまで増えていない、といった感じでしょうか。

この後不正受給の件数は3年連続で減少し、2019年度には3万2392件となっています。不正受給の総額は129億6089万5千円と大幅に減少しました。2019年度の生活保護費が3.8兆円(令和3年度当初予算)だったので、不正受給の割合は0.34%まで減少しています。

以上のことから、近年になって特に悪質な不正受給が横行している、といったことは決してないということができます。


 

 

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