11月14日に厚生労働省は社会保障審議会の部会を開きました。
この部会では、5年に一度の生活保護・生活困窮者支援制度の見直しに向けた報告書案が提示されました。
生活保護を受給している世帯からの大学進学を支援するため、従来よりも貯蓄を柔軟にできるようにする一方、生活保護を受けながら大学に通うことは引き続き認めない方針です。
生活保護を受けていない世帯の子どもでも、アルバイトや奨学金により学費や生活費を自ら捻出しているケースがあることが、報告書案では指摘されました。こうした一般世帯とのバランスを考慮して、生活保護を受けながらの大学進学については「慎重な検討が必要」と強調されました。
現行の生活保護制度では大学進学は認められていません。もし、生活保護受給中の世帯の子どもが大学に進学する場合、その子どもを保護の対象から外す「世帯分離」が必要となります。これにより大学進学する子どもは学費や生活費を自ら捻出しなければならず、さらに保護受給世帯の支給額も減額となります。こうしたデメリットから保護受給世帯の大学進学が抑制され、貧困の世代間連鎖につながるといった問題が指摘されています。
また近年では新型コロナウィルス禍により学生のアルバイトの機会が減少し、学費、家賃、生活費などが支払えなくなるケースも見られます。やむなく本人の望まないグレーな仕事に就く事例も散見されます。こうした学生に一時的に生活保護の利用を認めるように求める声もありましたが、報告書案では否定的な考えが示されました。
生活保護制度は最低限度の生活を維持するための制度なので、多額の貯蓄は認められません。場合によっては生活保護の「廃止」や「停止」につながります。また、生活保護費に加えて働いて収入を増やすことにも制限があります。生活保護を受けながら仕事をして収入を得ると、一定の控除分以外は「収入認定」され手元には残りません。これも保護制度が制定限度の生活を維持するという趣旨に基づいています。
これが原則ですが、大学進学においては「塾の費用」や「大学の入学金」に充てる目的であれば、保護費が減額されずに高校生がアルバイト収入を貯めることができます。
今回の報告書案では、進学前に納付する前期授業料などもこれに含める考えが示されました。
今回の報告書案は年内に正式決定され発表される予定です。
大学進学は先進国によっては無償な場合もあり、我が国の大学進学費は高額で、過度なビジネス化が批判されています。大卒初任給は他の先進国に比較して安く、高額な奨学金を10年以上に渡り返済する。これが晩婚化、未婚化、少子化につながっていると問題視されています。
教育費に対して国がどのような政策をとるのか、引き続き注目する必要がありそうです。