生活保護の方がお部屋の契約をする際、「生活保護受給証明書」を提出するよう言われることがあります。今回はこの生活保護受給証明書とはどのようなものか、説明していきます。
目次
生活保護受給証明書とは
生活保護受給証明書は、現在生活保護を受給している事実を自治体が証明する公的な書類です。
つまり、今現在わたしは間違えなく生活保護を受けていますよ、ということを証明する書類のことです。
生活保護を受けていますと言われても相手からはそれを確かめる方法がありません。役所に電話するなどの方法もありますが、個人情報の関係で教えてくれない場合もあります。そのような時に生活保護受給証明書を取り寄せれば、本当に生活保護を受給しているのかが分かります。
どのような時に使うの?
生活保護受給証明書は各種制度の申請の際に使うことが多いです。
例えば、
- 小・中学校でかかる費用の一部を補助する「就学援助制度」を申し込む場合
- インフルエンザの予防接種などの費用減免手続きをする場合
- 法テラスを利用した場合の償還免除を申請する場合
- 生活保護の方がアパートなどの契約をする場合
などに生活保護受給証明書の提出を求められます。
生活保護の方は各種制度の利用料が無料になったり、減額されたりします。そういった申請の際に、その人が本当に生活保護を受けているか確認するために、生活保護受給証明書の提出が必要になります。
生活保護受給証明書を提示すれば無料で住民票を発行してもらえるというメリットもあります。ただし、コンビニで発行する場合は免除になりませんので注意してください。
生活保護受給証明書のもらい方
生活保護受給証明書はどのようにもらえばいいのでしょうか?
発行の仕方はかんたんで、福祉事務所の窓口でもらうことができます。特に発行料がかかるということはありません。
住民票などと同じように、必要になった時にその都度発行してもらうイメージです。
生活保護受給証明書には何が書いてあるのか?
実際の生活保護受給証明書を見ながら説明します。
これが実際の書式です。(書式は各自治体によって少しずつ異なります)
- 発行年月日:発行した日付が記載されます
- 受給時の住所:現住所が記載されます
- 世帯主指名:保護世帯の世帯主の氏名が記載されます。生活保護は世帯単位で実施されるため、このような書式になっています。住民票と似ていますね
- 扶助の種類:現在受給している扶助の種類が記載されます。生活保護は大きく分けて8種類の扶助に分類されます。そのうちのどの扶助を受けているのかが記載されます。
扶助の種類については、詳しくはこちらを見てみてください - 受給者の氏名など:保護受給世帯の全員の氏名が記載されます。生年月日、続柄、性別も記載されます。いつから保護を受けているのか、について受給期間の欄に記載されます
- 備考:特記事項があれば記載されます。どのような用途で発行したのかなどの情報が書かれる場合もあります。その場合「不動産会社提出用」などと記載されます
- 保護の実施主体:どこの自治体で保護を受けているのかが分かります
入居審査で生活保護受給証明書を求められる場合
生活保護の方がお部屋の契約をする場合に、生活保護受給証明書を求められる場合があります。必須の書類ではありませんが、申し込みをする不動産会社によっては提出を求められる場合があります。
一つ注意が必要なのが、生活保護受給証明書は公的な身分証の代わりにはならないということです。運転免許証やマイナンバーカード、健康保険証などの身分証は別途必要になります。他の身分証は用意しなくていいや、ということにはなりませんので注意してください。
では生活保護受給証明書は何のために提出するのか?それはあなたが間違いなく生活保護を受けているかどうか確認するためです。
貸主としては無職や低収入の方にお部屋を貸すのはリスクがあります。ただし生活保護を受けていれば毎月家賃分のお金が住宅扶助として役所から支給されます。貸主はお部屋を貸すにあたり、本当に生活保護を受けているかを確認しておきたいのです。
生活保護受給証明書の内容で入居審査に落とされることはあるか?
生活保護受給証明書の内容で入居審査に落とされることはあるのでしょうか。
まず、生活保護不可の物件の場合、申し込みの時点でお断りされます。ですから生活保護受給証明書を求める時点で、生活保護の方でも入居可能な物件ということになります。
その上で書類の提出を求める一番の理由は、上で説明した通り、あなたが本当に生活保護を受けているか確認するためです。
この確認をしたい場合、生活保護受給証明書を提出さえすれば審査は通過するはずです。提出さえすればいいわけですから、生活保護受給証明書の内容で入居審査に落とされることは基本的にはなさそうです。
ただし次のような場合、内容次第では入居審査で落ちる可能性があるので注意が必要です。
「扶助の種類」を見られる場合
生活保護受給証明書には「扶助の種類」が記載されます。ここに例えば「医療扶助」と記載があると医療機関を受診していることが分かります。不動産会社によってはどんな理由で病院を受診されているんですか?などと聞いてくる場合があります。
例えば「足が悪くて整形外科に受診しています」と説明した場合、階段しかない物件だと「このお部屋に入居させて大丈夫だろうか」と考える貸主はいるかもしれません。これだけで審査を落とされることはなさそうですが、突っ込んで聞いてくる不動産会社はあるかもしれません。
そして一番注意が必要なのが医療扶助の内容が精神科受診の場合です。精神科や心療内科を受診する敷居は時代とともにずいぶんと低くなりました。それでも入居者に精神疾患があることをリスクと捉える貸主はいまだに存在します。近隣に迷惑をかけられるんじゃないか、お部屋で自殺されたらどうしよう、などのリスクを貸主は考えます。
本人としては軽い不眠やうつで精神科受診しているとしても、貸主はそうは思わない可能性があります。
そして生活保護受給証明書には病状は一切記載されません。本人は軽度のうつと言っているが、貸主からするとそれを客観的に判断する材料が何もないのです。
本来精神疾患があるという理由で入居を拒むことは差別に当たります。しかし精神疾患を賃貸のリスクと捉える貸主がたくさんいることは残念ながら事実です。
生活保護受給証明書の内容で入居審査に落とされない方法
ではどうすればよいのでしょうか?もし自分が精神科に通院していて、生活保護受給証明書に「医療扶助」と記載されていたら入居はできないのでしょうか?
証明書には「医療扶助」としか書かれません。客観的な病状が書かれないことはもちろん、どこの病院にどのような理由でかかっているのかについても一切書かれません。
ですから自分から「精神科にかかっている」とさえ言わなければ、精神科受診が発覚することはありません。
風邪をひいたり腰を悪くして病院にかかることは誰にでもあるでしょう。もし聞かれたら精神科受診のことはあえて自分から言わずに、他の受診の話をするのも一つの方法です。
ただし、生活保護受給証明書には保護の実施主体が記載されます。貸主が福祉事務所に直接電話を入れて、担当者の受給状況について細かく確認される可能性があります。この場合でも「どのような理由で病院を受診しているか」は個人情報にあたりますので、役所が勝手に第三者に教えることはできないはずです。心配なら事前にケースワーカーに連絡をして、このような確認が入っても答えないように口止めしておくといいでしょう。
精神疾患があることをオープンにしたい場合はどうすればいいか
上記は医療扶助の内容を自分から「言わない」という対処法です。
それでは精神疾患があることをオープンにした上で入居したい場合はどうすればいいのでしょうか?
人によっては調子が悪くなった時のために、あらかじめ精神疾患があることを貸主に知ってもらったうえで入居したいというご希望を持たれる方もいらっしゃいます。
本来このような方の住居は地域にたくさんあるべきだと思います。しかし現状では民間の賃貸住宅を選ぶ場合、精神疾患があることをオープンにすると選択肢はぐっと減ります。選択肢が減るということは、お部屋の条件が悪くなるということです。
民間の賃貸住宅以外にも、自治体が提供しているセーフティネット住宅を視野に入れてもいいかもしれません。精神障害者グループホームの中には、アパートで一人暮らしをしているのとほぼ同じ環境を提供できるサービスもあります。このようなものをうまく利用するとご希望の条件が見つかるかもしれません。