鈴鹿市自動車利用禁止事件(2件目)の津地裁判決:完全勝訴

ご案内をいただきましたので転載します。


生活保護利用者の自動車保有については過度に制限的(ほとんど理不尽)な厚生労働省通知があり、これが生活保護利用の大きなハードルとなっています。

昨日、津地裁(竹内浩史裁判長)において、重い身体障害があるのに自動車保有を禁じられ生活保護を停止された事案について、処分取消しだけでなく国賠も認める完全勝訴判決が言い渡されました。
特に自動車保有を厳しく制限する現行厚労省通知の適法性に強い疑問を呈した点が画期的です。弁護団員は、三重の芦葉甫(主任)、馬場啓丞、仙台の太田伸二各弁護士と私の4名です。
三重の支援者の方々が献身的に原告の方の生活を支えてこられたからこそ、訴訟を維持することができたと思います。鈴鹿市は控訴を断念し、厚労省は通知改正をすべきです。鈴鹿市に対する類似の別件については、津地裁の同じ合議体で本年3月21日に勝訴判決が言い渡されています。こちらについては、鈴鹿市は控訴し、10月28日に控訴審の名古屋高裁での判決が予定されていますので、引き続きご注目ください。
“生活保護取消し鈴鹿市の処分違法”車の利用目的を通院に限定|NHK 三重県のニュース

昨日の判決に関する馬場弁護士の解説と各種報道を以下に貼り付けます。

(以下引用)
三重の馬場です。本日、津地方裁判所にて、鈴鹿市自動車利用禁止事件(2件目)の判決が言い渡され、実質完全勝訴と言って良い内容でした。画期的と思われる部分が色々ありますが、特筆すべきは2だと思われます。

  1. 憲法22条、障害者権利条約20条、障害者基本法、障害者差別解消法、全国市長会の意見、日弁連の意見に言及
  2. 課長通知は、次官通知や局長通知との「整合性を直ちに見いだしがたい」「タクシーでの移送との比較まで認めた付加部分は、最近のタクシー事情と照らしても、一層合理性が疑わしくなっている」と判示
  3. 仮に、関係通達等に従って判断したとしても、課長通知の5要件を全て満たしていたと判断すべきであった。タクシーでの移送と比較した要件を満たさないとの判断は、地域のタクシー事情から合理性が認められない。
  4. 見積書の追加提出を求める指導は過剰な指導で、生活保護法27条2項の義務に違反
  5. 国賠は、慰謝料10万円、弁護士費用5万円で15万円を認容
    (引用終わり)


    来週10月3日に名古屋で開催予定の日弁連人権擁護大会第1分科会「今こそ、生活保障法の制定を!」の当事者報告のところで、芦葉弁護士と原告の方による報告も予定されています。オンライン配信もあり、既に日弁連HPに配信URL等も掲載されていますので、是非多数ご参加ください(終了後アーカイブ配信も予定しています)。

第66回人権擁護大会シンポジウム第1分科会チラシ (nichibenren.or.jp)

日本弁護士連合会:【10月3日・4日】第66回人権擁護大会・シンポジウム (nichibenren.or.jp)

(以下は関連報道です)

生活保護停止を取り消し 自動車保有巡り 鈴鹿市に命じる 津地裁判決 三重(伊勢新聞) – Yahoo!ニュース

車の保有巡って生活保護の支給停止は「違法」市による停止処分を取り消す判決 障害者の女性の訴え認める(東海テレビ) – goo ニュース

<メーテレ報道>

https://news.yahoo.co.jp/articles/e7b2b3fe853aa0d8cb9ed529c18ca46a28a8b882

(以下貼付)
車の保有巡り「生活保護の支給停止は違法」鈴鹿市に賠償金支払い命じる判決 津地裁
メ〜テレ(名古屋テレビ) 津地裁
保有する車をめぐる指導に従わずに生活保護の支給を止められた三重県鈴鹿市の女性が処分取り消しを求めた裁判で、津地裁は処分取り消しを命じる判決を言い渡しました。鈴鹿市に住む72歳の女性。手足などがしびれる障害で10年以上前から最も重い等級の身体障害者に認定されています。「自分でも嫌になる。すぐ立てない。車がなかったらどうしようもない」(原告の女性)女性にとって、通院や買い物など生活に欠かせない車ですが、この車をめぐるトラブルで2年前、鈴鹿市に対して裁判を起こしました。訴状によりますと、2019年、女性は市に生活保護を申請。受給はすぐに決まりましたが、車の保有は認められませんでした。さらに、車は20年以上前につくられた古い小型車ですが、市は資産価値を証明する見積書を出すよう求めました。女性は、市の要求が生活保護法における「必要最少限度」の指導を超えているとして、見積書を出しませんでした。市は、指導に従わなかったとして生活保護の支給を停止。女性は、指導は違法だったなどとして、処分の取り消しと損害賠償を求める訴訟を起こしました。「私にとって車は足です。私の足は走れないし、杖がないと歩けないから、車なら運転できるから」(原告の女性)「原告に自動車の保有を認めるべきだと裁判所がはっきり言っている」原告側弁護士の会見
26日の判決で津地裁は、生活保護の支給を停止した処分を違法として処分取り消しと賠償金15万円の支払いを鈴鹿市に命じました。また、車の保有をめぐる鈴鹿市の判断については、「通院での福祉運送車両の使用は不可能で、タクシーの利用も現実的ではない」「保有を認めなかったことは裁量権の濫用にあたり違法」と指摘しました。「よく頑張りました。皆様と共に感謝しても感謝しきれません」(原告の女性)「原告に自動車の保有を認めるべきだと裁判所がはっきり言っている。これは画期的」(原告側 芦葉甫 弁護士)一方、鈴鹿市は判決について「主張が認められずに残念」とするコメントを発表しました。「今後については判決の内容を精査して対応する」としています。
(貼付終了)


<NHK報道>動画はリンク先で見られます。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/tsu/20240926/3070013779.html
(以下貼付)
車処分の書類未提出で生活保護停止 鈴鹿市の処分取り消す判決
09月26日 19時44分
生活保護を受けていた三重県鈴鹿市に住む女性が、車の処分に関する書類を提出しなかったことなどを理由に生活保護を停止した市の処分は違法だと訴えた裁判で、津地方裁判所は、訴えを認め、市の処分を取り消す判決を言い渡しました。生活保護を受給していた障害がある鈴鹿市の72歳の女性は、市が車の所有を認めないとした上で、車の処分に関する見積書を提出しなかったことなどを理由に生活保護を停止された処分は違法だとして、おととし11月、処分の取り消しと損害賠償を求めて津地方裁判所に訴えを起こしていました。26日の判決で津地方裁判所の竹内浩史裁判長は「原告はごく短い距離を歩くのも困難な障害者で、福祉運送車両の使用が不可能なうえ、そのつどタクシーを予約するのも現実的とは言えない。車の保有を認め、自立を助長することこそが合理的だ」と指摘しました。
その上で、「車の保有を認めないこと自体違法で、車の処分を前提に見積書の提出を求めた指導も違法だ。指導に違反しても生活保護を停止することは許されない」として女性の訴えを認め、市の処分を取り消し、女性に15万円を賠償するよう命じる判決を言い渡しました。

【鈴鹿市の末松市長「残念な結果」】
判決を受けて鈴鹿市の末松則子市長は、「本市の主張が認められなかったことは残念な結果であると考えております。上級省庁、弁護士と協議を行い、判決の内容を精査したうえで対応してまいります」などとするコメントを出しました。
【原告の女性「これで終わりではない」】
判決後に開かれた記者会見で原告の女性は、「よく頑張りました。みなさまにずっと支援されていて、1人ではないので、すごく感謝しています。これで終わりではないので、人生の終わりまでライフワークとして頑張るつもりです」と話していました。
(貼付終了)

弁護士 小久保 哲 郎
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
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