前回は、居住支援法人がどのような人を対象に、どのような支援を行っているのかをご紹介しました。今回はもう少し踏み込んで、「宅建業(宅地建物取引業)」との違いを明確にしたうえで、居住支援法人にできること・できないことを整理します。
同じく「住まい探し」に関わる団体でも、法律上の立場や役割は大きく異なります。それぞれの特徴を理解することで、支援を受ける側・提供する側の双方にとってより良い連携が見えてくるはずです。
第1回のブログはこちらをご覧ください。
目次
宅建業とは?営利的な不動産取引の専門家
まず「宅建業」について確認しておきましょう。
宅建業とは、「宅地または建物の売買・賃貸借の仲介や代理を業として行うこと」とされており、営利目的で物件の契約を仲介することが主な業務です。
宅建業を営むには、都道府県知事または国土交通大臣から「宅建業免許」を取得する必要があり、不動産会社や仲介業者がこれにあたります。
契約の仲介、重要事項説明、契約書の作成といった法的な取引行為を担当し、宅地建物取引士の資格を有するスタッフが対応にあたります。
居住支援法人とは?非営利・準営利で社会的に困難を抱える人の味方
一方、居住支援法人は「営利」を目的とせず、社会的に住宅確保が難しい人(住宅確保要配慮者)に対して、住まい探しを福祉的な立場で支える団体です。
居住支援法人は、不動産取引のプロではありません。主な業務は「情報提供」「相談支援」「関係機関との連携」にあり、契約自体の仲介行為(媒介業務)は行えません。
ただし、中には宅建業免許を取得している居住支援法人も存在し、その場合は仲介と福祉的支援をワンストップで提供することができます。
居住支援法人と宅建業の違い(比較表)
項目 | 居住支援法人 | 宅建業 |
---|---|---|
主な目的 | 住宅に困る人の支援 | 不動産取引による利益の追求 |
収益性 | 非営利または準営利 | 営利 |
必要な資格・免許 | 都道府県等の指定 | 宅建業免許 |
契約仲介の可否 | 原則不可(免許がなければ) | 可能(宅建業法に基づく) |
主なサービス内容 | 物件紹介、同行支援、見守り、福祉連携 | 売買・賃貸の仲介、契約手続き |
法的責任 | 社会的責任・支援の継続性が重視 | 取引の適正・安全性が求められる |
居住支援法人にできること・できないこと
ここで具体的に、居住支援法人の立場で「何ができて、何ができないのか」を整理しておきましょう。
✅ できること(宅建免許がない場合)
物件の情報提供(例:「この不動産会社に空き物件がありますよ」)
不動産会社や家主との連絡調整(同席・紹介・相談支援)
入居希望者の相談窓口
契約後の見守り支援や生活相談
⛔ できないこと(宅建免許がない場合)
契約交渉(家賃の交渉・条件の調整など)
契約書の作成・仲介
手数料を受け取っての媒介行為
こうした法的な制限を踏まえて、多くの居住支援法人は地元の不動産会社と密に連携しており、紹介・支援は居住支援法人、契約実務は宅建業者という役割分担が一般的です。
宅建業免許を取得する居住支援法人も増えている
中には、居住支援法人が自ら宅建業免許を取得している例もあります。そうすることで、物件探しから契約手続きまで一貫して対応でき、利用者にとっては「ワンストップ支援」が可能となります。
ただし、宅建業免許を取るには法的な要件や人員配置が必要であり、すべての法人が容易に取得できるわけではありません。とはいえ、支援の柔軟性を広げるためには有力な手段の一つと言えるでしょう。
第2回まとめ
居住支援法人と宅建業は、目的も役割も異なります。居住支援法人は「社会的に弱い立場の人が安心して暮らせる家を見つける」ことに軸足を置き、福祉的な立場から支援を行います。
一方で、宅建業は「契約の安全性と適正な取引」を担保する法律上のプロフェッショナルです。両者が連携することで、住宅確保要配慮者の住まい探しをより実効性のあるものにしていくことが可能になります。
次回第3回では、居住支援法人になるための要件や手続き、実際の指定までの流れについて詳しく解説します。法人化を検討している方にも役立つ情報をお届けしますので、ぜひお楽しみに。