生活保護を受けている方が転居指導された場合

生活保護受給時の転居指導とは?

生活保護受給者は生活費とは別に住居費を受給することができます。この制度を住宅扶助制度(以下、住宅扶助)といいます。住宅扶助として受給できる上限額は決まっています。しかし、居住している賃貸物件の家賃が住宅扶助の上限額を大幅に上回る場合、転居するようにケースワーカーから指導されます。これを「転居指導」と言います。ケースワーカーとは福祉事務所の職員であり、生活保護受給者の相談に乗る相談員です。ケースワーカーから転居指導を受けた場合は、条件に合う賃貸物件へ引っ越しする必要があります。


 

 

転居指導が行われる理由

転居指導の最も多いケースは、住宅扶助基準を超える家賃の物件に住んでいる場合です。この基準を超えると、受給者が負担する家賃が大きくなりすぎ、生活保護の趣旨に反するためです。その他にも、二人暮らしで世帯として保護を受けていたが、家族の一人が世帯から外れた場合や、住んでいたアパートが取り壊しになる場合などがあります。これらの状況では、住居の条件が変わるため、新たに適切な住居を探す必要が出てきます。


 

 

転居指導に従わない場合

転居指導は生活保護法第二十七条を根拠に行われます。

第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる

そのため、転居指導に従わない場合は口頭や文書による指導を受けます。それでも従わないと、最悪の場合生活保護が停止されることがあります。ケースワーカーから転居指導を受けた場合は、必ず従うようにしましょう。しかし、場合によっては転居できない事情があるかもしれません。その時は必ずケースワーカーに相談して指示を仰ぐようにしましょう。相談せずに転居を行わないでいると、「転居指導に従わない」とみなされる場合があります。


 

 
 

物件を探す際のポイント

転居指導を受けた場合、まずは新しい賃貸物件を探す必要があります。以下のポイントを参考にしてください。

  1. 住宅扶助の上限額を確認する: 新しい物件を探す際には、まず住宅扶助の上限額を確認しましょう。この額を超えない範囲で物件を探すことが重要です。
  2. インターネットや不動産会社を活用する: インターネットの賃貸物件サイトや不動産会社を利用して、条件に合う物件を探しましょう。不動産会社に直接訪問して相談することも有効です。
  3. ケースワーカーに相談する: 物件探しに困ったら、ケースワーカーに相談しましょう。ケースワーカーは地域の物件情報や転居手続きについて詳しい情報を持っていることが多いです。
  4. 転居費用の支援を確認する: 転居にかかる費用についても確認しておきましょう。場合によっては、引越し費用や敷金礼金などの一部を支援してもらえることがあります。

     

 

物件が見つからない場合

物件を探しているのに見つからない場合は、ケースワーカーにその旨をしっかりと説明しましょう。例えば、予算内の物件が見つからない、希望する地域に適切な物件がないなどの具体的な理由を伝えることが重要です。ケースワーカーは、こうした事情を考慮して対応してくれることが多いです。また、物件探しを手伝ってくれる場合もあります。


 

 
 

転居の流れ

物件が見つかったら、次は転居の手続きです。以下は一般的な流れです。

  1. 契約手続き: 新しい物件の賃貸契約を締結します。この際、敷金や礼金、初月の家賃などが必要になる場合があります。
  2. 引越しの準備: 引越し業者を手配し、引越しの準備を進めます。段ボールの手配や荷造りを計画的に行いましょう。
  3. 旧居の退去手続き: 現在住んでいる物件の退去手続きを行います。退去日を決め、管理会社や大家さんに連絡しましょう。
  4. 新居への引越し: 引越し業者による運搬が完了したら、新居での生活を開始します。役所への住所変更手続きや各種ライフラインの契約変更も忘れずに行いましょう。

     

 

転居後の手続き

新しい住居に引っ越した後、いくつか重要な手続きを行う必要があります。これらの手続きを怠ると、後々トラブルになる可能性があるため、しっかりと行いましょう。

  1. 役所への住所変更手続き: 転居後14日以内に、市区町村の役所で住民票の住所変更手続きを行います。これにより、住民票や国民健康保険証の住所が新住所に変更されます。
  2. 郵便物の転送手続き: 郵便局にて転居届を提出し、旧住所に届く郵便物を新住所に転送してもらうように手続きします。この手続きは無料で行え、1年間有効です。
  3. 電気・ガス・水道の契約変更: 電気・ガス・水道の使用開始手続きを新住所で行い、旧住所の使用停止手続きを行います。インターネットや電話で簡単に手続きできる場合が多いです。
  4. 金融機関や保険会社への住所変更: 銀行口座やクレジットカード、生命保険や自動車保険など、契約している金融機関や保険会社にも住所変更の連絡をします。これにより、重要な通知や書類が確実に新住所に届くようになります。

     

 

新生活の準備

新しい住居での生活をスムーズに始めるために、以下のポイントに注意しましょう。

  1. 家具・家電の配置: 引越し先での家具や家電の配置を計画的に行います。使いやすい配置にすることで、新生活が快適になります。
  2. インターネット環境の整備: インターネットの契約を新住所に移転し、早めに接続環境を整えます。インターネットが使えることで、様々な手続きや情報収集がスムーズに行えます。
  3. 近隣の環境把握: 最寄りのスーパー、病院、公共交通機関の位置を確認し、日常生活に必要な施設へのアクセスを把握しておきます。これにより、急なトラブル時にも迅速に対応できます。
  4. 安全対策: 防犯対策として、鍵の交換やセキュリティシステムの導入を検討しましょう。また、非常時の避難経路や近隣の避難場所を確認しておくことも重要です。

     

 
 

転居に伴う注意点とトラブル防止

転居に伴う手続きや準備を進める際、いくつかの注意点があります。これらに気を付けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

  1. 賃貸契約の内容確認: 新しい住居の賃貸契約書をしっかりと確認し、不明点があれば必ず不動産会社や管理会社に問い合わせます。契約内容を理解することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
  2. 敷金・礼金の確認: 敷金や礼金の取り扱いについて事前に確認しておきましょう。退去時の敷金返還条件や、礼金の使途について理解しておくことが大切です。
  3. 転居費用の管理: 転居にかかる費用をしっかりと管理し、予算を超えないように注意します。引越し業者の見積もりを複数取って比較することも有効です。
  4. 旧居の原状回復: 旧居を退去する際、原状回復義務があります。これは、退去時に部屋を入居時の状態に戻すことを意味します。壁の穴や床の傷などは修繕が必要な場合があるため、事前に確認し、必要な対応を行いましょう。

     

 

ケースワーカーとのコミュニケーション

転居に伴う手続きや準備を進める中で、ケースワーカーとのコミュニケーションが重要です。以下のポイントを意識して、円滑に進めましょう。

  1. 定期的な報告: 転居の進捗状況を定期的にケースワーカーに報告します。物件探しの状況や、転居手続きの進行状況を共有することで、ケースワーカーからの適切なアドバイスやサポートを受けやすくなります。
  2. 相談の積極性: 転居に関して不安や疑問がある場合は、積極的にケースワーカーに相談しましょう。相談することで、適切なアドバイスを受け、スムーズに手続きを進めることができます。
  3. トラブル時の対応: 物件探しや転居手続きでトラブルが発生した場合は、速やかにケースワーカーに報告し、対応を相談します。ケースワーカーは様々な経験と知識を持っているため、トラブル解決の助けとなるでしょう。

     

 

具体的な事例

実際に転居指導を受けて転居した事例を紹介します。

事例1: 家賃が高すぎる物件からの転居

田中さん(仮名)は、家賃が住宅扶助の上限額を超える物件に住んでいました。ケースワーカーから転居指導を受け、予算内で条件に合う物件を探し始めました。しかし、適切な物件がなかなか見つからず、焦りが募りました。田中さんはケースワーカーに相談し、物件探しのサポートを依頼しました。ケースワーカーから地域の不動産会社を紹介され、ようやく条件に合う物件を見つけて転居することができました。

事例2: 世帯構成の変更による転居

鈴木さん(仮名)は、家族と一緒に住んでいたアパートの取り壊しが決まり、転居が必要になりました。鈴木さんはケースワーカーと相談し、転居先の候補をいくつか見つけました。しかし、引越し費用の負担が心配でした。ケースワーカーの助けを借りて、引越し費用の一部を住宅扶助から補助してもらい、スムーズに新しい住居へ転居できました。

 

転居後の生活の質を向上させるためのヒント

転居は新たなスタートです。新しい住居での生活をより快適にするために、以下のヒントを参考にしてください。

  1. 地域のコミュニティに参加する: 新しい地域での生活に慣れるために、地域のコミュニティ活動に参加してみましょう。近所のイベントやボランティア活動に参加することで、新しい友人を作ることができ、地域社会に溶け込みやすくなります。
  2. 健康管理: 新しい住居での生活が始まったら、健康管理にも気を配りましょう。近くの病院やクリニックを確認し、定期的な健康チェックを受けることを忘れずに。健康な生活を送るためには、バランスの取れた食事と適度な運動も大切です。
  3. 家計の見直し: 新しい生活に合わせて家計の見直しを行いましょう。収入と支出のバランスを見直し、無理のない範囲で貯金をすることを心がけます。節約のポイントや家計簿の付け方について学ぶことも有効です。
  4. 自己啓発: 転居を機に新しい趣味やスキルを学ぶことを考えてみましょう。地域のカルチャーセンターや図書館で開催される講座に参加することで、新しい知識やスキルを身に付けることができます。

     

 

転居を機に生活全般を見直す

転居は新しい環境での再スタートの機会でもあります。この機会に、生活全般を見直してみましょう。

  1. 生活習慣の改善: これまでの生活習慣を見直し、健康的な生活を送るための改善を行いましょう。規則正しい生活リズムやバランスの取れた食事、十分な睡眠を心がけることが大切です。
  2. 住環境の整備: 新しい住居を快適に過ごせるように、住環境を整備しましょう。部屋の整理整頓や掃除を定期的に行い、清潔で居心地の良い空間を作りましょう。また、インテリアや収納方法を工夫することで、より快適な住まいになります。
  3. 目標設定: 新しい生活を始めるにあたって、短期的・長期的な目標を設定しましょう。例えば、半年後に資格を取得する、一年後に貯金を一定額達成するなど、具体的な目標を持つことで、日々の生活にメリハリが生まれます。
  4. ストレス管理: 転居による環境の変化は、ストレスの原因になることがあります。適度なリラックス方法や趣味を持つことで、ストレスを上手に管理しましょう。友人や家族とのコミュニケーションも大切です。

     

 
 

まとめ

生活保護を受けている方が転居指導を受けた場合、新しい住居を見つけることや転居の手続きが必要です。この過程では、ケースワーカーとのコミュニケーションが重要であり、積極的に相談しながら進めていくことが求められます。また、転居後の生活を快適にするために、地域のコミュニティに参加したり、健康管理や家計の見直しを行うことが大切です。新しい環境での生活を充実させるために、目標を設定し、ストレスを管理しながら、前向きな気持ちで新生活をスタートしましょう。

転居は大変なことも多いですが、新しい生活を始める良い機会でもあります。この記事が、転居指導を受けた方々の助けとなり、新しい住居での生活がより良いものになることを願っています。


 

 

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