生活保護の基準、これで本当に暮らせるの?―山梨県の実態調査から見えてきたこと

最近、山梨県がとても注目される取り組みを始めました。なんと、県内の生活保護受給世帯を対象に「本当に今の支給額で暮らしていけているのか?」を調べる実態調査を実施し、その結果を国に示したうえで「保護費を引き上げるべきだ」と声を上げたのです。

物価がぐんぐん上がっている今、「生活保護で本当に最低限の暮らしができているのか?」という疑問を、多くの人が感じているはずです。山梨県の調査結果からは、その問いに対する切実な声が浮かび上がってきました。


■ 調査で分かった、生活保護世帯の「リアルな暮らし」

山梨県が調査した生活保護世帯のうち、「生活が大変苦しい」と答えた人は36%。さらに「やや苦しい」と合わせると、なんと全体の4人に3人が「生活が苦しい」と感じていました。これは全国調査の63%よりも高い数字です。

食事も満足にとれていない世帯も少なくなく、1日1回以下という回答が14%。毎日お風呂に入れている人は22%と、生活の基本とも言える部分に大きな困難があることが分かります。

さらに驚いたのは、約9割の世帯が「貯金がまったくできていない」ということ。何かあったときに備えるどころか、毎月のやりくりだけで精一杯というのが実態です。


■ 物価は上がっているのに、保護費は?

最近の物価の上昇は、ニュースなどでもよく目にします。山梨県の資料によれば、令和2年から7年までの5年間で、物価全体が10%ほど上がり、食料品に関しては実に23%も値上がりしているとのこと。ですが、生活保護費の基礎となる「生活扶助」の支給額は5%程度しか増えていません。

つまり、同じ保護費をもらっていても、買えるものはどんどん減ってしまっているということです。


■ 国の対応はどうなっている?

厚生労働省は2025年度から、生活扶助に月1500円の特例加算を行うと発表しました。でも、食料品の値上げ幅が20%を超えている今、月1500円では正直焼け石に水です。

しかも、日本では「生活保護費は最低限の生活費」と言いながら、実際にはそれ以下の生活を強いられている人も少なくありません。


■ 世界と比べてどうなの?

欧米の福祉制度と比較すると、日本の生活保護はかなり厳しい部類に入ります。たとえば、ヨーロッパでは生活保護の金額が最低賃金に近い水準であることも多く、家賃や医療費、子どもの教育支援など、サポートも手厚いです。

日本では、「生活保護を受けるのは恥ずかしいこと」というイメージが根強く、申請のハードルも高いです。そのため、本当は支援が必要なのに申請できずに困っている人もたくさんいます。


■ 山梨県の声が広がることを願って

今回の山梨県の取り組みは、全国に先駆けた大きな一歩だと思います。地方自治体が「現場の声をちゃんと拾って、必要な支援を国に求める」という動きは、本来の自治のあり方です。

生活保護の支給額が実態と合っていないことは、少し前からずっと問題視されていました。それでも大きく見直されることはなく、多くの受給者が「ギリギリの生活」を強いられてきました。

山梨県のような動きが他の自治体にも広がり、国全体として「人として当たり前に暮らせる支援とは何か」をもう一度考える流れが生まれてほしい――そんな希望を感じるニュースでした。


 

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