生活保護と自動車保有を考える院内意見交換会に参加してきました

2025年3月12日、衆議院第二議員会館で開催された「生活保護における自動車保有問題に関する院内意見交換会」に参加してきました。今回はZoomを併用したハイブリッド形式での開催でしたが、私は現地会場での参加を選び、実際の雰囲気や空気を肌で感じることができました。

この意見交換会では、生活保護制度のもとでの自動車保有の制限について、さまざまな立場からの意見や実情が共有されました。日本弁護士連合会(日弁連)の報告をはじめ、当事者の声や実際に起きた裁判の報告などがあり、制度の問題点と今後の課題が明確に浮き彫りになる内容でした。

自動車保有は原則禁止、でも…

現在の生活保護制度では、自動車の保有は原則として認められていません。ただし、障がいを抱えている方や、公共交通機関の整備が不十分な地域に住む方が通勤や通院を目的とする場合など、やむを得ない事情がある場合には例外的に認められることがあります。

しかし、この「例外的」という扱いが現場では非常に厳しく運用されており、「生活保護を受けるためには自動車を手放さなければならない」といった実情が、生活保護の申請そのものをためらわせる原因となっているケースも少なくありません。

特に地方に住んでいる方にとって、自動車はただの移動手段ではなく、「生活そのものを支えるインフラ」とも言える存在です。最寄りのスーパーや病院が車でなければ通えないような地域で、「車を持ってはならない」という制度は、現実的ではないと感じます。

制度の一律運用に対する批判

今回の会では、「生活保護制度における自動車保有制限の運用があまりにも画一的で、実情に合っていない」という点に多くの登壇者が言及していました。たとえば、三重県鈴鹿市では、実際に生活保護受給者が自動車保有を理由に給付を打ち切られたことが裁判に発展し、問題の深刻さが改めて認識されています。

制度の趣旨としては、資産を持っている人が生活保護を受けることは望ましくないという観点がありますが、自動車に関しては「資産」というよりも「生活の足」という性質が強く、都市部と地方ではその意味合いもまったく異なります。

日弁連からは、「個別事情に応じた柔軟な対応を可能にする制度設計が必要である」とする意見書が紹介されました。これは、多くの現場での声を反映したものであり、今後の法改正や運用見直しに向けた第一歩になると感じました。

参加してみての感想

実際に参加してみて最も印象に残ったのは、当事者の方の「車がなければ働けないし、生活もできない。でも、生活保護を受けるには手放さなければならない」という声でした。その葛藤や切実な思いがストレートに伝わってきて、制度の見直しの必要性を改めて痛感しました。

また、会場では国会議員の方々も参加されており、この問題に対する政治的関心の高まりも感じられました。単に制度の問題にとどまらず、「人が尊厳を持って生きるために必要な支援とは何か」を問い直す機会となったように思います。

生活保護制度は、最後のセーフティーネットとして非常に重要な役割を果たしています。その制度が、地域によって、また生活様式によって利用のハードルが大きく異なるのは、本来の趣旨から外れていると言わざるを得ません。

今後も、このような意見交換の場が継続的に設けられ、現実に即した制度改革が進んでいくことを願っています。今回の参加を通して、自分自身も制度の「当事者意識」を持ちながら、日々の支援活動に活かしていきたいと感じました。


※このブログは2025年3月12日に開催された「生活保護における自動車保有問題に関する院内意見交換会」に実際に参加した内容をもとに執筆しています。

 

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