アパートの契約更新時に無職だと、更新できないか?

アパートの契約更新時に無職だと、更新できないか?

以前お客様からこのような相談をされたことがありました。

「私は現在病気の療養中で、先日会社は退職しました。現在は退職後の傷病手当金で生活しています。もうすぐ今住んでいるアパートの更新があります。無職だと更新できないと聞いたんですが、引っ越さないといけないんでしょうか?ちなみに今まで家賃の滞納などはしたことがありません。しばらくは家賃を支払っていくだけの十分な貯金もあります。」


 

 

無職でも賃貸借契約の更新はできる

結論から言えば、普通賃貸借契約であれば、たとえ無職であったとしても契約の更新は可能です。
賃貸借契約においては、借主は貸主よりも立場が弱くなってしまう傾向にあるため、法律により手厚く保護されています。

お部屋を借りた際の賃貸借契約書を見返してみてください。契約の形態が書いてあるはずです。
「普通賃貸借契約」「普通借家契約」「一般借家契約」などと書いてあれば、問題なく更新できる可能性が高いです。

もし「定期借家契約」と書いてある場合、契約の更新は難しくなります。このブログの後半部分で解説しているので読んでみてください。


 

 

契約期間、更新料について

賃貸借契約書には、契約の期間についても書いてあります。通常は2年と定められていることが多く、この期間が経過すると「契約の更新」となります。

借地借家法29条1項には、次のような記載があります。

(建物賃貸借の期間)
第二十九条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。

期間が1年未満の賃貸借契約は、期間の定めがないものとみなす旨を定めています。そのため契約期間は1年以上として設定する必要があり、通常は2年と設定されていることが多いです。

賃貸借契約書を見て、更新料についての記載があるか確認してみてください。契約更新にあたり更新料が発生する場合は、更新料がいくらなのか明記されているはずです。
契約書に更新料に関する規定がない場合は、更新料の支払い義務はありません。

更新料は「新賃料の1か月分」などと記載されていることが多いです。新賃料とは、賃料の改定があった場合の、最新の賃料という意味です。


 

 

貸主からの更新拒絶は6ヵ月前に言わなければいけない

借地借家法26条1項、30条には次のような文言があります。

(建物賃貸借契約の更新等)
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

(強行規定)
第三十条 この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

つまり、更新を拒絶する場合は、期間満了の6ヵ月前までに伝えなければならないのです。そして貸主の側からこの更新拒絶の期間を短縮することはできません。
借主を保護するために、更新拒絶する場合は、最低でも6ヵ月の準備期間を設けているのです。

ご相談者は「もうすぐ」と言っていますが、更新期限が6ヵ月よりも近くにせまっている場合は、貸主から更新拒絶をすることは、すでにできません。


 

 

借主が無職になったからと言って契約更新を拒絶できるのか?

借主が無職になったからと言って契約の更新を拒絶できるのでしょうか?
契約の更新を拒絶できる理由は法律のよって定められています。借地借家法28条を見てみましょう。

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

条文には「正当の事由」という文言があります。

つまり、貸主の方から更新を拒絶する場合は、正当な事由が必要になるのです。貸主が商売や居住のためにその物件を使用する必要がある(借主の必要性とどちらが優先するのか比較して判断されます)、建て壊しの必要がある、いわゆる立退料を支払っている場合などが想定されます。

その他、貸主と借主の信頼関係が壊れているとみなされる場合は更新を拒絶することができます。例えば数回にわたり家賃の未払いがある、何度お願いしても家賃を払ってもらえない、他の入居者と何度もトラブルを起こしているなどです。

ただ無職になっただけでは信頼関係が壊れているとはみなされません。

ご相談者のケースでは、家賃の滞納はしたことがないようなので、たとえ無職であったとしても更新拒絶事由には該当しません。問題なく契約更新することができるでしょう。


 

 

無職なのに嘘をつくと、更新できないので注意!

更新の際には、「更新申込書」などの書類に現在の職業を書く場合があります。無職であることを知られたくないために、ここに嘘の職業を書いてしまう場合があります。

在籍確認などで、もしこの嘘がバレてしまった場合、虚偽申告をしたとみなされて更新ができなくなってしまう可能性があります。更新拒絶の正当な事由である「信頼関係が壊れている」状態であるとみなされてしまうのです。

無職であったとしても更新ができなくなるわけではありませんから、嘘をつかずに正直に伝えましょう。

更新時に書類のやり取りがない場合、職業を書く欄がない場合などは、無職であることを借主から話す義務はありません。


 

定期借家契約の場合は、更新できない可能性も!

ここまで書いてきたのは、契約の形態が普通賃貸借契約だった場合です。

もし、契約の形態が「定期借家契約」だった場合は話が違ってきます。

定期借家契約とは、当事者間の合意によって締結される「更新のない」建物賃貸借契約です。
この契約は基本的には更新という概念がありません。よって上記で説明した借地借家法上の更新拒絶事由などの保護も受けられなくなります。

もし更新をしたい場合は、現在の契約期間が満了したのちに、新たに賃貸借契約を結び直す必要があります。その際に無職であることを理由に契約を断られても、借主は不当を訴えることはできません。


 

 

もし定期借家契約で無職だった場合、更新をあきらめなければいけないか?

定期借家契約であったとしても、もし期間満了で契約を終了させると新たに借主を募集する必要があります。
これは貸主にとってはそれなりに負担です。

あなたが優良な借主で、これからも住み続けてもらいたいと貸主が考えれば、更新(再契約)できるかもしれません。

たとえ無職であったとしても、

  • これまでに長く住んでいて、貸主に人柄を知ってもらえている
  • これまで家賃の未払いなどがない
  • 近隣とトラブルなく生活してきた
    などのポイントで優良な借主と判断されるかもしれません。

さらに無職であることについて、

  • 転職、再就職までにどのくらいの期間がかかるか
  • 休職中にも家賃の未払いが生じないというアピールをする(預金通帳のコピーを提出するなど)
  • 同居者が仕事をしている場合、その旨を伝える
    などの説明を付け加えることで効果があるかもしれません。

これらはあくまでもアピールであって、法的な保護はありません。これにより貸主が契約をしなければいけないわけではありません。

 

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